最後のプール

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プールに飛び込むと、シュワシュワのサイダーの中みたいだった。
白い照明に照らされた泡が跳ね回っている。
もう夏じゃないなんて嘘だ。
水の中で体を暴れさせた。
海に行った。
水泳大会に出場した。
祭りに行った。
花火に行った。
バーベキューをした。
また明日もみんなで行こうよ。
サーフィンしようよ。
釣りをしようよ。
風が冷たくなってきたね、なんて言うな。
この体の熱で、もう一度世界を丸ごと沸騰させてやるから。

プールサイドに上がって、一人息を整える。
すぐに体が震えて、鼻の奥からぬるいものが垂れてきた。
プールの監視台が、大空への野望を失った動物園の鷹みたいに固まっている。
遠い山並みの向こうに瑠璃工場があって、そこから瑠璃色がこの空のすべてを覆い尽くそうとしている。そんなふうに思った。
水泳部が今日で終わりだなんて、信じられない。
俺は真空の冷たい空に吸い込まれそうになった。
青春
公開:20/09/27 00:09

水素カフェ( 東京 )

 

最近は小説以外にもお絵描きやゲームシナリオの執筆など創作の幅を広げており、相対的にSS投稿が遅くなっております。…スミマセン。
あれやこれやとやりたいことが多すぎて大変です…。

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