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いつも通り、ノゾミと一緒に下校する。
『ミユ、恋花しようよ』
「恋バナのネタなんてないよ」
『恋バナじゃなくて、恋花。タネがあればいいの』
そう言って、ノゾミは制服の胸ポケットからハート型の粒々を取り出した。
『このタネを思い切り握るの。想いを寄せる人がいると花が咲くんだって』
「ふーん。いいけど、多分わたしは咲かないよ」
今月は期末テストに吹奏楽部のコンクール。わたしに恋愛なんてしている暇はない。
『せーので握ろっか』
「うん」
その時、
『おーい、お前ら何してんの?』
シュンだ。わたしが嫌いな男子、シュン。こんなときに。
シュンはいつもわたしのことをからかって、いじわるしてくる。
今だって。
『ミユ、髪切ったろ? 失恋?』
「うるさい。行こ」
わたしは、ノゾミの手を引いて早足で角を曲がった。
「もう、なんなのアイツ」
『ミユ、咲いてる』
気がつけば、一輪の赤いバラを強く握りしめていた。
青春
公開:20/09/26 21:52

日常のソクラテス( 神奈川 )

空想競技コンテスト銅メダル『ピンポンダッシュ選手権』
空想競技コンテスト入賞  『ダメ人間コンテスト』
ベルモニー Presents ショートショートコンテスト入賞 『縁茶』
X (twitter):望月滋斗 (@mochizuki_short)

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