9
8

文学賞の締め切りが刻一刻と近づいていた。だが一向に良いアイデアが浮かばない。
作家である友人に相談すると、ひとりの僧侶を僕の家に連れてきて、こう言った。
「この方を師として修行に励むといい。僕もそれで受賞することが出来たんだよ」

そうして僕は山に登ると、モテる為に伸ばした髪を剃り、袈裟を着た。
「この世は諸行無常。目を閉じただ唱えなさい。さすれば煩悩は消え、悟りの道が開けるでしょう」
師は初めにそう言った。
「悟りの道…そしてその先には…賞が…?」
僕が問うと師は答えずに、ただ穏やかな笑みを浮かべた。

師の言葉を信じ、僕は来る日も来る日も滝に打たれながら経を唱え続けた。
「南無妙法蓮四千字…南無妙法蓮四千字…南無妙法蓮四千字…南無妙………」

「はっ!」

その日、ついに僕は悟ったのだ!
この修行は坊ちゃん文学賞の為ではなく、坊さん文学賞の為のものだと!
その他
公開:20/09/24 23:02
更新:20/09/25 00:02

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容