精神外科医

この町に引っ越してくる人は皆どこかおかしい。
そんな人達を外に出さない為に町の周囲は大きな柵が建てられている。
この町に住む人は皆どこかおかしい。
何かに怯えるように毎日を静かに過ごしている。
来たばかりの時は「自分は正常だ！」と叫び、異常を拒絶していた。
そんな人達に救いの手を差し伸べるのが私の仕事。
今、私の前にいる人は「神が見える！」とほざいている。これで正常だなんて片腹痛い。
きっと頭のネジが緩んでいるんだろう。私は愛用のドライバーを取り出すと騒ぐその人の眼に突き刺した。
ぐるりとドライバーを回すと、はい。施術完了。これで神が見える目はなくなりました。頭のネジが締まりました。
まだ神が見えますか？見えるならもう片方の眼にも施術します。
「神はいなくなりました…」目から血を流し、震えながらその人は出て行った。
この町に住む人は今日も残った方の目を守る為、まともなフリをして生きていく。