創作落語『賽売り』

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近頃じゃ百貨店でも売れねぇとわかりゃ先手先手でセールをしてやがる。
一体、当初の値段に何の根拠があったのか。
お金ってのは不思議なもんで。

「さぁお立合い。この賽は願った目が願ったままに出る不思議な賽。今ご覧に入れよう。」
こりゃ珍しいと暇人どもが集まってきた。
「ご婦人。どの目がよいか」
「では3を」
「あいわかった」
ぱっと賽を振ると言う通り3の目がぴたっと出た。
「この賽一目一貫文なり」
値段を聞いて「高すぎる」ってんでぞろぞろ野次馬が帰る中、男が尋ねた。
「やいやい、3割安くしてくれやしねぇかい」
「お立合い。この賽で博打をすれば直ちに元が取れるだろう」
あっさり断られちまった男。
おもしろくねぇてんでずらかろうとすると、その背中を見て気が変わった賽売り。
「あいわかった。では3割値引きをいたす。これでよかろう」
道半ば、男が返事をする。

「まけた賽なんていらねぇやい」
公開:20/10/14 18:00
更新:20/10/01 23:32
創作落語 賽=さいころ 一貫文≒11000円 狸賽アナザーストーリー まける=値切りする 負ける

まのじゅん( 神戸 )

まのじゅん/間野 純
神戸市在住の26歳
執筆は2020年春ごろから

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