そうめんの木

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間もなく雨季が終わる。最後の大雨がやってきた。村人たちは雨量計を気にしながらソワソワしている。

「もうそろそろ準備しようかの」
村長の一言で、家々に知らせが回る。「流しそうめんだー、そうめんが来るぞー」

川の両岸に村人が並ぶ。手にはすりこ木かと思うような太く長い箸を持っている。バケツをひっくり返したような雨が、川面と村人たちを打つ。

「ウーーーー」サイレンが鳴った。

「ダムが放流されたぞ!来るぞ、構えろ!」
激しい濁流に乗って、そうめんが勢いよく流れてきた。村人たちは夢中になってすくいあげる。そうめんの勢いに押され川に落ちた村人が、川下の村人にすくいあげられた。

恐らくこれが最後の流しそうめんだ。村人が減り、川上にあるそうめんの木を手入れすることができなくなった。最後の一本も老齢で、おそらく来年はそうめんの実をつけることはないだろう。

「じっくり味わって食べるんだぞ」
その他
公開:20/09/25 16:01
スクー サヨナラ流しそうめん

いづみ( 東京 )

文章を書くのが大好きです。

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