空色電話ボックス

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 S市には、不思議な噂がある。M商店街を抜けて、十字路を左、そして坂を登ったところに、ごく稀に、空色の電話ボックスが現れる、と。


 どうしよう。明日は大事な仕事がある。上手くいかなかったら?失敗したら?そんなことを考えながらの帰り道。足元ばかり見てしまう。

 …ふと、顔を上げる。
 あれ?こんなとこに、電話ボックスなんてあったっけ?
 あ、空色だ…もしかして…!!電話ボックスに駆け込み、受話器を取る。


 プルルルルルル


 「胸に手を当ててみて。感じるのは、不安の“ドキドキ”じゃなくて、期待の“ワクワク”。きっと大丈夫よ」


 おばあちゃんの声。
 “ワクワク”。きっと大丈夫。
 不安がスッと消えていく。
 

 足取りは軽い。もう足元は見ない。
 まっすぐ前を見て歩く。明日へ向かって!



 “空色電話ボックス”。それは、天国からのメッセージを届ける、素敵な電話ボックス。
その他
公開:20/09/25 11:25
実習中、お世話になった 大好きな先輩へ 空色電話ボックス

すみれ( どこか。 )

書くこと、読むことが大好きな社会人3年生。
青空に浮かぶ白い雲のように、のんびり紡いでいます。
・プチコン「新生活」 優秀賞『また、ふたりで』
・ショートショートコンテスト「節目」 入賞『涯灯』



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