ファーストコンタクト

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大きな隕石が落ちた。直径八十メートルのどら焼きのような隕石は、ぶつぶつと信号を発する。信号を分析した結果、生命体であることが判明した。私たち調査チームは前日の雨で濡れた「それ」の上を歩く。信号メッセージに対して、最適な応答行為で直接コンタクトする。
かたかたと震える一隅で計器盤を持つチーム員が言った。
「ここが鎖骨です」
私はその場所に立つと両足でステップを踏んだ。スペイン風のステップを三度踏むと次に向かった。
雨でできた水たまりには調査隊の点滅ランプが映っている。
「ここが眼球です」
水たまりに向かって私は上着を脱ぎ上半身裸になってラジオ体操の手足の屈伸運動を三度繰り返した。
「では次です」どら焼きの頂上はすっかりぬかるんでいる。
「ここがふくらはぎです」
私はぬかるみに両脚で入った。ずぶずぶとブーツごと沈んだ。
「接触ポイントはあと十箇所です」
宇宙人との挨拶は手間がかかるものである。
その他
公開:20/09/25 11:11

たちばな( 東京 )

2020年2月24日から参加しています。
タイトル画像では自作のペインティング、ドローイング、コラージュなどをみていただいています。
よろしくお願いします。

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