脱皮

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「見つけて!主人を」

交番に女が焦った様子でやってきた。

「朝、この皮だけが残されていて」
「これは脱皮ですね。捜査は難航しますよ。今のご主人が脱皮前と同じ姿とは限りませんから……。ひとまず皮は預かります」

女はうなだれ、手続きの後に帰っていった。

……あんな美人、ほっとけるかよ。

俺は警察官を脱ぎ捨て、預かった夫の皮に身を包んだ。

早速女の家へ。夫の帰還に泣いて喜んでくれるだろうか。しかし、インターホンで返事をしたきり女はなかなか出てこない。

「よかった!前と一緒!」

やっと出てきた女と抱擁を交わし、家へ上がる。まずはこの皮の主のことを知らねば。俺はクローゼットを開けた。

「ダメ!」

女の叫びと同時に、中から半裸の男が現れた。

……俺だ。
いや、正確に言うと、俺が以前脱皮した皮を被った誰かだ。

「お前、誰だ?」

言いかけて口をつぐむ。

そもそも、俺も誰なんだ?
ホラー
公開:20/09/25 11:15
更新:20/09/25 11:19
#ことば公園 そるとばたあさんの Twitterでのお題を 膨らませてみました

makihide00( 鳥取→東京→福岡 )

30代後半になりTwitterを開設し、ふとしたきっかけで54字の物語を書き始め、このたびこちらにもお邪魔させて頂きました。

長い話は不得手です。400字で他愛もない小噺を時々書いていければなぁと思っております。よろしくお願いします。

Twitterのほうでは54字の物語を毎日アップしております。もろもろのくだらない呟きとともに…。
https://twitter.com/makihide00

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