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入店音が鳴り、汚ならしい衣服を着込んだ小柄な男が自動ドアをくぐり抜けてきた。
その初老の男は店の後ろの方へとすぐに消えた。

しばらくして、今度は若くてこざっぱりした背の高い男性が店にやってきた。ほとんど毎日店に顔を出す人だ。おそらくはこの近くで働いているサラリーマンだろう。

案の定、彼はサンドイッチとソルティ・ライチを手に抱え、こちらへ向かってきた。
彼のことは、ちょっと前から気になり始めていた。というのは嘘で、初めて見たときにもう、一目惚れだった。

私はドキドキと高鳴る心臓に静まり給えと小さくつぶやきながらバーコードリーダーを構えた。
目の前に置かれたのはアダルト雑誌だった。

血の気の引く思いで顔を上げると、そこには先の男が居た。
会計を終えて意気消沈した私に、なんと彼が声をかけてくれた。
「ごめん、ウチの親父デリカシー無くてさ」

私は早速、未来予想図の再設計にとりかかった。
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公開:20/09/29 07:00
更新:20/09/23 22:10

レオニード貴海( 某海なし県 )

さまようアラフォー主夫

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