テラリウム

「これをあげましょう。大事にするのよ」
母に手渡されたそれはガラスのように透き通った綺麗な玉だった。

「宝物にします」
受け取った僕は真っ白な綿のような羽根にくるんで大切に箱に入れた。
しばらくその玉を眺め、そしてこの世で一番美しい玉をつくろうと思いついた。

（植物をたくさん入れよう。水や、空気や光が必要だね）
（ああ、せっかくだから小さい魚や虫たちも入れて美しいテラリウムにしよう）

それから毎日大切に手入れする日々が続いた。
玉の中ではいつしか新しい生態系もでき、僕はそれを虫眼鏡で覗き込むのが楽しみになっていた。

それはそれは美しい緑の玉、僕のテラリウムが出来上がろうとしていた。
なのに……。

どうしたわけかある日テラリウムは赤い玉になってしまった。
植物も、生き物もいない。触ってみるとものすごく熱い。

僕の美しいテラリウムはどうやったら取り戻せるのだろう。