おかしな二人

ーバターは無塩の、それ違う。卵は常温な。あ、計量は平らなとこに置かないと。そこ、粉がダマんなってる。
ーちーっ、ダメ出し魔。楽しく作んなきゃお菓子じゃねーって。
ーこぼした！目ぇ離すな。
漂う甘い香りとは裏腹、キッチンは荒模様。転がり込んできた悠を置いてやったものの、ガサツな悠に俺のペースは狂いっ放し。やっぱり余熱し忘れてるし。こないだなんか、クッキー焦がして炭にしたんだよな。
ピンポーン。
ーお、入って入って。こちら杏と桃ね。ちょうどケーキ焼けたとこ、今持ってく。

リビングから聞こえる笑い声。女子来るなんて聞いてないし。悠のやつ、自分が焼いたような顔しやがって。ここを誰のうちだと…

―あのう。
黒目がちの子が微笑んでいる。
―忙しいんですか。食べに来ないの。
ーいやそういう訳じゃ…
ーこれ作ったの悠じゃないでしょ？レシピ聞いていいですか。
ーう、うん
（悠には貸しばかりだったけど）