明日の子ども

子どもの頃の思い出だ。

ラジオ番組を聴きあさり、友達からレコードを借り、好きな曲をめいっぱい、つめ込んで録音したカセットテープ。

宝物だった。さあ、永久保存版の完成だ。もう上書きできないように、テープの爪を折る。

なぜか緊張した。そして、嬉しかった。

クラスで撮った集合写真。僕は左端、好きな子は真ん中ちょっと右にいる。一緒に写った唯一の一枚。机の一番上の引き出しに、大切に入れていた。

めげそうになった時、引き出しを開ける。写真のあの子に元気をもらい、また丁寧に引き出しを閉じた。

なにげなく、それでいて、どうしようもなく愛おしい瞬間。いまの子どもたちは、そんな瞬間を大切にできているだろうか。

学校の勉強より塾の勉強より、大切なその瞬間。

忙しない時の流れが、自分のためだけにふっと止まるような一瞬を、明日の子どもたちに伝えてゆけるだろうか。