奪われた者たちへ

　犯罪を教唆するWebサイトの通報が入り、担当の捜査員は膨大なネット情報の中で、それを、ついに、発見し、そして――液晶の中の文字の羅列に見入った。



　奪われた者たちへ

　私は知っている。お前が誰に何を奪われたのか。
　奪われたのは幸福と、希望。
　誰に？
　決まっている。
　奪われた者以外の――すべての人間だ。

　奪い返せ。
　殺意を抱け。
　憎しみを滾らせろ。
　権利は、ある。
　奪われたお前には、ヤツらを殺す権利が、ある。
　武器なら提供する。
　命尽きるまで、存分に殺戮せよ。
　繰り返す。
　奪い返せ。
　殺意を抱け。
　憎しみを滾らせろ。
　そして…奪われた者以外の、すべての人間を殲滅せよ！


「狂ってやがる…」
　PCの液晶を見つめていた捜査員がそう呟いた。
　サイトには"何か"を意図的に集めようとする詳細不明の応募フォームが貼られており、期限は今日で切れていた……。