『世界』

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その青き絵画に論争は尽きない。 

深い深い青と荒々しさの中に垣間見える繊細なタッチ。厳しくも優しい母なる海を描いた絵画。ほら、今にも潮騒が聞こえて来るようではないか。

深みの中に見える淡い透明度の青。透き通るようで、大胆なグラデーション。広大にして自由なる空。今まさに清らかな風が吹き抜けるようだろう。

この青の絵画には、解釈に『海』派と『空』派の対立があった。

さて、その真実を少し覗いてみよう。

ーー眩い青だった。

美術室から見えるプールサイドに彼女はいた。
煌めき、波打つ。白い肌が水面を叩き、飛沫が舞い、濡れた髪。

全てが青い。

彼女は背中に「世界」を引き連れ、泳ぐ。

描け。もっと青を。足りない。もっと深く。青をもっと。もっともっと青を。

彼の作品で、美術館に所蔵されたのはわずか1枚

『世界』そう名付けられた青き絵画が、青き時代のラブレターだと、知るものは少ない。
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公開:20/09/21 23:25
更新:20/09/21 23:27
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空津 歩( 東京在住 )

空津 歩です。

ずいぶんお留守にしてました。

ひさびさに描いていきたいです!


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