AR祖父アプリ

SEだった祖父は死後、親族のスマホに”AR祖父アプリ”を勝手にインストールした。
こいつを起動してカメラを祖父の住んでいた家に向けるとAR祖父が現れて、してほしい事を言ってくるんだ。
その依頼をこなし、逸早く百ポイント貯めた者が祖父の遺産を相続できる。
親族は毎日のように祖父の家に行くとアプリを起動させる。中にはすぐに頼み事が受けられるよう、祖父の家に住みこむ者も出てきた。
だが、このポイントが中々貯まらない。AR祖父は成果に満足しないとポイントを減らす。１年以上祖父の家に顔を出さなければポイントは全損する。
何とも厄介なシステムだが遺産の為と親族は出来る限り祖父の家に集まった。
そうしていると、いがみ合っていた親族同士が苦労を分かち合い始めた。意外と住みやすい家に愛着が湧くと言い出した。昔の仲の良かった時代を思い出した。
そんな様子を祖父は満足そうに見るやアプリを消し、天国へと旅立った。