お知らせ

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「お取込中の所すみません。終了のお知らせに来ました」
声の主は見すぼらしい姿の老人。青年は驚かなかった。
「死神ですか?言われなくても自分の人生がもう終わりな事ぐらいわかってる」

幼い頃に両親が離婚。互いに青年を引き取りたがらず押し付け合うように施設に入れられた。
そこで日常的に虐待にあい、中学を卒業するとすぐに施設を出た。
住所も定まらず、その場凌ぎの職を転々とする日々。
時には同僚の財布を盗んだと疑われ、追われるように職場を去る事もあった。
それでも青年は腐らず、彼なりに前向きに歩いてきた。
そして今、道を歩いている女の子を庇って車に轢かれ、宙を舞っている。
死神が迎えに来たと思うのも無理はなかった。

「いえ、終了なのはあなたの貧乏くじです。全部引き切ったので」

青年は奇跡的に無傷で着地。助けた女の子が国会議員の孫だった事が縁で政界でのし上がっていくのだが、それはまだ先の話。
その他
公開:20/09/22 23:42

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