心のアイロン

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「心のシワ、のばします」と、ポスターがドアの横に貼ってあった。
「いらっしゃいませ。それではこちらに横になってください」と、ベッドへ案内された。
店員は横たわった私の側に立ち、「それでは始めますね。痛くはないと思いますが、何かありましたらお知らせください」と言い、私の胸にアイロンがけをしようとした。それは普通のアイロンと全く変わりなく、接地するまでに私をヒヤヒヤさせた。次第に瞼が重くなった。
『裏切り者』『親友』『略奪』『別れ』キーワードが浮かんだ。じわっとした温かさとともに、蒸気になって消えていった。
「…お客様。終了しましたよ」と、店員に起こされた。胸に手を当てるが、鼓動を感じるだけで何もない。
「また気になるようでしたらいらしてください」店員に見送られ、店を後にした。
そもそも心にシワがあるのかも、綺麗になったのかも、私にはよくわからなかった。
ただ、お腹が段々空いてきた。
ファンタジー
公開:20/09/22 23:06
#初心者

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