李夫人の罠

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私は貴方を殺したいんじゃない。愛されているか確かめたいだけ。
ティータイムに差し出したケーキに貴方は手を付けようとしない。
きっと私が毒を盛ったと思っている。昔から感だけは良いから。
「ここのケーキ好きでしょ。」
新聞から目は離さず生返事しか返ってこない。
私を信じて食べてくれたら全て終わるのに。
「さぁ、一緒に食べ…」
玄関のチャイムが鳴った。
「あら、こんな時に…」
ゆっくりと玄関へ向かう。貴方は視界から消えた。

「お届け物だったわ。」
変化の無い貴方とケーキ。
「……先にいただきます。」
手元のケーキを一口食べる。ゆっくりと味わった。
新聞が微かに折れる音。
貴方の視線をやっと感じる。
私は絶望で声どころか涙すら出なかった。
どこか安堵したように貴方はケーキに手をつける。

私が食べるはずだった毒入りのケーキを。
私は貴方を殺したいんじゃない。愛されているか確かめたかっただけ。
その他
公開:20/09/22 21:52

吉田図工( 日本 )

まずは自分が楽しむこと。

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