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蜘蛛の糸の中に、一本だけ釣糸みたいな太いのがあった。神々しい。光輝いている。これがうわさの蜘蛛の糸じゃなかろうか。

私は、慎重にその一本の蜘蛛の糸をつかむ。
ぜったいに離してはいけないと、天からの御告げが聞こえてくる。

私は蜘蛛の糸を伝い、進んでいく。間違いない、このまま行けば私の世界は一瞬のうちに見違えるはずだ。もうすぐ、希望の聖なる光が見えてくることだろう。

ああ、なんとこれまでの私は不甲斐ない人生を歩んできたのだろう。しかし、この蜘蛛の糸を見つけることができたのだ。振り返ることはない。

蜘蛛の糸は、ソノサキの先で大きな繭のかたまりみたいになっていた。私は夢中になってそのかたまりをほじくってゆく。すると、若い女の手が見えてきた。

私は天を仰いだ。つまりこの方は、天使ということでしょうか。

私はゆっくりと繭のかたまりに頭から入っていく。ここは心地良い。あなたも来たらいいのに。
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公開:20/09/22 15:12

きろひの、えう

ぼそぼそと創作話を書いています。

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