両肩の天使

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 これまで悪行を重ねて来た組織のボスがいた。彼は謎の病に倒れて立っていられなくなりベッドから離れられなくなった。
「神様。俺はまだやりたいことがたくさんある。どうか助けてください」
 彼がまだやりたいことと云うのはもちろん悪行である。もっと他人から金を巻き上げたいとか、組織の縄張りを広げたいとかそういう願いだ。彼はそんな願いを胸に懸命にベッドから這い出して起きようとした。が、彼が無理にベッドの脇に降り立って起きたとたん、体が左に腰からポキリと折れてくの字になって死んでしまった。

 人の左右の肩にはそれぞれに天使が乗っているのをご存知だろうか。右の天使はその人の善行を記録し、左の天使は悪行を記録する。善行は羽のように軽く、悪行は鉛のように重い。普通の人間は大概この重さの均衡が取れていて、一生を過ごすが、死んだこのボスは左の肩だけが異常に重くなり、そのせいでくの字に体が折れてしまったのだ。
その他
公開:20/09/22 11:35

N(えぬ)( 横浜市 )

読んでいただきありがとうございます。(・ω・)/
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