ピクルス

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もう随分と昔の話だ。
週に一度、木曜になるとピクルスを持った隣のおばあさんがにこにこと我が家にやって来たのは。と言ってもお裾分けではない。ピクルスの瓶の蓋が固くて開けられないのだ。
「わるいけどまたお願いできるかしら」その言葉と共にピクルスは皺の多い手から送り出される。確かにその瓶はひどく固く開けるのには苦労させられた。それでもどうにか蓋を開けるとおばあさんは少女の様に喜ぶのでこちらも何だか嬉しくなるのだ。

だけどある時からぱたりと姿を見せなくなった。亡くなったと聞いた時は、秋風が吹いた様な寂しさを感じたのを覚えている。

そう言えば一度こんな事を聞かれた。
「あなたピクルスはお好き」
「実は酸っぱい匂いが苦手で」そう答えるとおばあさんは、「まだまだお子様ね」と無邪気に笑っていた。

あれからもう随分経つ。
不思議なことに今でも時々かぎたくなるのだ。
苦手なはずのあのピクルスのにおいをー
その他
公開:20/09/21 20:13

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