吾輩は猫なのだ

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私の寝ている間にまた水が降ったのか。
窓に挨拶して、レースのカーテン裏に入ると、透明板の向こうに地面のタイルが濡れているのが見えた。
窓の隙間から水の匂いもする。
丈の長い庭草の葉裏の産毛が銀に輝いている。
やれやれ他にも外の世界に変化がないか確認をしたいところだが、その前に人間を呼んで来ないと。
鳥の羽ばたきが騒がしいぞ。
まったくこんな大事件が起きているというのに、人間はなぜ無関心なのか。
キーボードに私が乗ると、人間はしかめ面をして私をカーペットに下ろす。毎日絵の動く板と話していないと不安になるらしい。可哀想だが私には治してやれないのだよ。
カーテンの前で再び声を上げると、人間はぶつくさ言いながら椅子から離れて、私のために窓を開けてくれた。
お前は行かないのか?
振り返ると、人間は拗ねた顔をして窓を閉めてしまった。そしてまた板に向かって話し出すのだ。
ありゃあ、やっぱり病気だな。
公開:20/09/21 11:24
リモートワーク

水素カフェ( 東京 )

 

最近は小説以外にもお絵描きやゲームシナリオの執筆など創作の幅を広げており、相対的にSS投稿が遅くなっております。…スミマセン。
あれやこれやとやりたいことが多すぎて大変です…。

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