超速成長ヒゲ男(ひげおとこ)書道家になる（３）

ある時、書道パフォーマンスの開始時刻を間違えた連絡が入り、ヒゲ男(ひげお)は準備のためにヒゲを短く切り揃えてしまった。
何時間も先だと思っていたのに、開始まで30分しかないのだ。その間にヒゲは10cmしか伸びない。
こうしたトラブルが起こりうることを想定していたヒゲ男は、自前の長さ２mの付け髭を用意していた。
それを使って迫真のパフォーマンスを行い、大喝采を受けて事なきを得た。

こうしてヒゲ男は数々の困難を乗り越え、驚異的な実績を積み上げた。
そしてその日が来た。
ヒゲ男は師匠から免許皆伝を授けられ、大日本書道連合からも独立流派の認可を得たのだ。

見事独立を果たしたヒゲ男流だが、ヒゲがそんなに伸びる人間など他にいない。それはわかりきっていたことだ。
当面は門弟を作り、そこに末端の弟子が集まればいいわけだ。彼らにはヒゲ男流の字の方だけ学ばせ、家元自らはパフォーマーに徹して門下生を集めた。