音泉旅行
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少しばかり人生に疲れた私は、癒しを求めて温泉旅行に来た。奥深い渓谷の岩場にひっそりと湧く天然温泉は、お湯というよりは温水に近かった。その日は他に客もなかったので、私はゆったりと全身を広げて浸かることができた。
しばらく仄かな熱が肌から染み込んでくる快感を味わっていると、耳の奥に何かぼんやりと響くものがあった。周囲を見ても緑豊かな山の風景に変化はなく、むしろその響きは胸の内から湧き上がってくるように感じられた。幾つもの金管楽器が重層的に思い思いの音を響かせ合っているような緩やかな調べで、中心となるような旋律は見つけられなかった。
私は瞼を閉じてその音の流れに身を委ねた。身体の力が抜けて温水に溶けてしまうかのようだった。次第に音の響きは充溢していき、大きな唸りとなって、不思議な気力が湧いてきた。
瞼を開けると空が抜けるように明るく、頬に触れる爽やかな風が、思いのほか心地よく感じられた。
しばらく仄かな熱が肌から染み込んでくる快感を味わっていると、耳の奥に何かぼんやりと響くものがあった。周囲を見ても緑豊かな山の風景に変化はなく、むしろその響きは胸の内から湧き上がってくるように感じられた。幾つもの金管楽器が重層的に思い思いの音を響かせ合っているような緩やかな調べで、中心となるような旋律は見つけられなかった。
私は瞼を閉じてその音の流れに身を委ねた。身体の力が抜けて温水に溶けてしまうかのようだった。次第に音の響きは充溢していき、大きな唸りとなって、不思議な気力が湧いてきた。
瞼を開けると空が抜けるように明るく、頬に触れる爽やかな風が、思いのほか心地よく感じられた。
ファンタジー
公開:20/09/19 00:07
最近は小説以外にもお絵描きやゲームシナリオの執筆など創作の幅を広げており、相対的にSS投稿が遅くなっております。…スミマセン。
あれやこれやとやりたいことが多すぎて大変です…。
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