消えモノ

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いただき物が好きではない。食べ物ならまだいい。残るのが嫌なのだ。なのに…。宅配の包装を解き、私は溜息をついた。

すでに子供らはそれぞれの家庭を持ち、長年連れ添った主人も一昨年前に他界した。ひと通りの整理も終え、いま身の周りは自分のお気に入りばかり。その安らぎの空間に、孫娘から届いたお土産を置いた。

花の置物だった。10歳ともなると多少の遠慮も覚えるのだろうか。こんな偏屈ばあさんの趣味も考えての選択だけに、その微妙なずれ方がかえって、室内の違和感を際立たせていた。

「まずは飾ってよ。それからにしてね」

お礼の電話をすると孫娘は大人びた言い方をした。やましい思いを打ち消そうとした私を待たずに、続いた言葉は予想外のものだった。

「よくできたキャンディでしょ」

唖然として振り返ると、花を口に放り込む仕草は主人の影…が消えて、残って。

「甘いもの控えてるのよ。しばらく飾らせてもらうわ」
その他
公開:20/09/19 23:21
更新:20/09/19 23:29

糸太

400字って面白いですね。もっと上手く詰め込めるよう、日々精進しております。

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