『悪魔』

それは、黒く塗り潰された退屈な黒い壁に銀の額縁が付いただけだった。図書館の壁に描かれたそれが、謎の画家・マスカレイドの五大絵画、その一角を担う『悪魔』と表題された絵画であるとは分からないかもしれない。額縁に価値？それはない。額縁のついたマスカレイド作品は他にないが、専門家は額縁に価値はないと結論づけている。

『悪魔』には、多くの噂がある。

「声がする。悪魔の声さ」
「そこに悪魔が見えたら死ぬんだ」
「額縁がルシファーを封印している」
「街の犯罪は『悪魔』に魅せられた奴の仕業さ。」

これらがデマだとわかるほど、対峙すれば、その異常性にすぐに気づく。

その"黒"は夜よりも暗い"黒"であった。

日光、月光、あらゆる光でも照らせない。

光を100%奪う"究極の黒"。

それと対峙した時、あなたはすぐに額縁が命綱だと気がつくだろう。

『悪魔』があなたの"光"を奪ってしまわぬように。