遅れてきた才能

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歓声があがる。
「ここで彼に打席が回ってきました。本日三打席三ホーマー。つい最近まで普通の高校球児だったとは思えません」
そう、彼は高校三年生になるまで全く芽が出ない補欠中の補欠の球児だったのだ。
それが急に才能を開花させ、瞬く間に怪物と呼ばれるまでになった。
三日前の出来事だった。
「さあ、来い!」
彼は叫んだ。
顔には満面の笑みを浮かべている。
心の底から楽しんでいるという笑顔だ。
しかし彼は知っていた。
自らの才能は一時的なもので、一週間やそこらで尽きてしまうことを。
投手は最も打たれにくい外角低めにボールを放った。
彼が一振りすると、鋭い金属音が響いた。
打球は空を突き抜けるほど高く上がり、外野の頭を越していった。
再び激しい歓声で球場が包まれる。
その隙間からは、命を燃やすように叫ぶアブラゼミの声が聞こえてくる。
公開:20/09/19 10:11
更新:20/09/19 10:11
スクー 満塁アブラゼミホームラン

田坂惇一

ショートショートに魅入られて自分でも書いてみようと挑戦しています。
悪口でもちょっとした感想でも、コメントいただけると嬉しいです。

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