待ち合わせのシンボル

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背の高い彼は待ち合わせのシンボルだ。
「もしもし? 今北口。すぐ側に緑のTシャツ着ている背の高い男の人がいるよ」
と、いう具合だ。下手に動くと永遠にその二人が出会えない気がして会うのを確認してから移動する。
「はぁ、やっぱり来ないか」
友人とした昔の約束を律儀な彼は覚えていたが、今日も来ないようだった。帰ろうとした時、ズボンを引っ張る小さな手に気づく。
「ママどこ?」
「はぐれちゃったのかな? その子もかな?」
小さな男の子が柴犬を繋いだリードを握りしめていた。二人の頭を撫でる。
「大丈夫だよ、そこに迷子センターがあるからね」
一人と一匹を連れて駅の横にある施設に向かう。
「三木君、空振り? あら、迷子?」
係りの女性が男の子と犬に付いたバーコードを読む。
「三木君目立つからうちで働かない?」
データ検索しながら笑う。

ここは死者が死者を待つ駅。
今日も何人か無事再会出来たようだ。
その他
公開:20/09/17 18:48
死者の駅 待ち合わせ

射谷 友里

射谷 友里(いてや ゆり)と申します
十年以上前に赤川仁洋さん運営のWeb総合文芸誌「文華」に同名で投稿していました。もう一度小説を書くことに挑戦したくなりこちらで修行中です。感想頂けると嬉しいです。宜しくお願いします。

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