スツールサラリーマン

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大学生の頃、駅の椅子に座ったま微動だにしない20代のサラリーマンを見た。胸のあたりがかすかに膨らむが、それにしても動かないため蝋人形ではないかと疑ったほどだった。

「何分に着きそう?」
「もう電車に乗るよ^^」

僕は彼女と連絡に夢中で、さして気にも留めなかった。

だが彼は来る日も来る日もそこに座っていた。電車を何本も逃し、高齢者が近くに来ても動かない。テレビ番組の実験にしては凝り過ぎている。

謎が解けないまま季節は廻り、社会人2年目の僕はサラリーマン生活に嫌気がさしていた。毎日残業。休日は疲れをとるためとにかく寝て休む。彼女にも振られた。一体何のために生きているのか。そんな気持ちを抱えていた。

ふと、大学生の時、駅で見たサラリーマンを思い出す。
彼はあの時どんな気持ちだったのか知りたくて、同じ椅子に座った。その瞬間。呼吸以外何もできなくなった。
あの時の彼は未来の自分だったのだ。
ホラー
公開:20/09/17 17:56
サラリーマン 椅子 思考の停止

清水えまい( 東京 )

以前から書いてみたいと持っていたショート×ショート。
ようやく書き始めることができました。
自分自身楽しみながら執筆できたらなと思います♪

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