キャットブルース

彼女は猫が好きだった
赤い口紅が好きだった
飛行機が好きだった
ハードカバーの本が好きだった
白い布のトートバックが好きだった
映画館で飲むコーラが好きで
劇場が好きで
舞台に立つのが好きだった

袖でストレッチをしながら集中する
たった1人でライトのもとへ飛び出し
幕が閉まるまでお辞儀をする

帰りの電車で貧血を起こしぐったりと眠る
帰って湯船に沈んで
ぐでんぐでんになったところを
引き上げられ
ベットに放り投げられ
夜中に目を覚まして
食糧を要求し、文句を言われながらムシャムシャと食べる。
朝日を見ながらココアを飲む
昼まで眠り
また舞台に立つ

そんな日々が好きだった


彼女はある日子猫を拾った
緑の目が綺麗な子猫
そしてその子猫と共に
どこかに行ってしまった

トートバックも赤い口紅も、ハードカバーの本も置いて

わたしも置いて行ってしまった

彼女は猫が好きだった