仮面の画家

日本には珍しく、煉瓦造りの家や石畳が残るある街。 その画家にとって街はキャンバスであり、アトリエだった。時には路地裏のシャッターに、道路に、公園のトイレに、高校の校舎に。街の至る所に彼の作品は描かれた。
マスカレイド、『仮面の画家』と呼ばれた彼の正体を知る者はいない。だが、この街に彼の作品を知らない者も誰一人いなかった。その独特で躍動的な色使い、生き物のような筆致、彼の絵画は見る者を魅了した。

赤の『業火』
黒の『悪魔』
緑の『桜花』
青の『世界』
黄の『夜月』

『マスカレイドの5大絵画』と呼ばれ、文化遺産として保護対象になるほどで世界的に高い評価を得ている。

ある者は「まるで神を模したようだ」と称賛し、ある者は「仮面の画家は悪魔に魂を売ったのだ」と蔑んだ。ある者は「これは私のための絵だと」涙を流す。見るものによってマスカレイドの絵画は万華鏡のように姿を変え、街と共に人々に寄り添う。