きみが頭から離れない

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朝目が覚めると、頭の右に卵がついていた。鏡を見て、とろうとしたが、黄身が頭から離れない。キッチンに行って、母親に言うと、「じゃ、ハムエッグは自前でね。そこにパンとハムあるし」。ハムを頭の黄身にすりつけて、滴る卵黄をトーストで受けて朝食。
教室で後ろの席のナオに訴える。黄身が頭から離れないんだ
―てか、ふつーに不気味。
昼休みは一転してモテ。弁当や麺を月見風にしようと皆俺の頭の黄身を次々にちゅーちゅー。物理の先生が「どれどれ」と俺の髪をかき回したが、やはり黄身が頭から離れない。
放課後、いつものメンツと裏手の丘でグラウンドの女子テニス部の練習を眺めーの、ゲームに興じーの。
―あーまた死んだ。よそ見すんな。
俺も熱くなってきた。
―これにてご免。
立ち上がりざま、言い放つ。
―かてーこと言うなよ。
―さらばと言うのは少しの間死ぬることじゃ。
西日に当たり過ぎた。頭の黄身にかなり火が通っていた。
青春
公開:20/09/15 20:18
更新:20/09/16 03:08
ハードボイルド・エッグ #119 レイモンド・チャンドラー To say Good bye is to die a little.

こぶみかん( 関西 )

ssの庭に迷い込んだこぶみかん。数々のお話の面白さに魅せられ、通い始めた。
気が付いたら、庭の片隅に挿し穂されていた。
いつか実を結ぶまでじっくり育つといいね。

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