無手の狙撃手

銀行強盗による立て籠もり事件が起こった。
すでに銀行は警察官及び機動隊により包囲されているが突入は出来ない。犯人達が人質に銃を突き付けているからだ。
何がきっかけで発砲されるか分からない…人質の安全を考えると我々も動けない。
「お困りのようですね」
現場の指揮を執っている私に声をかけてきたのは近くにある相撲部屋の力士達だった。
「犯人達の立ち位置さえわかれば、僕達が無力化させてみせましょう」
追い詰められているのは我々も同じ…私は藁をも掴む思いで力士達に託してみた。

力士達は銀行の外柱に手を当てる。そして勢いよく突っ張り稽古を始めた。何やっているんだ？
『警部！犯人達が銃を落としました！突入します！』
事件はあっけなく解決した。
呆然とする私に力士達は教えてくれた。
「どうです？相撲部屋のテッポウ稽古。突っ張りの勢いを犯人の手元に絞り飛ばしました」
無手の狙撃手達に私はただただ感謝した。