まぼろしの鳥

「もう逃げられないぞ」
「完全に包囲されている」
「君の絶望は理解できる」
「誰も悲しい結末は望んでいない」

庭でカワラヒワが鳴いている。
かわいい声だ。カワラヒワって何ですか。そんな人はすぐに検索してくださいね。私も名前を知ったのはさっきですから。

「仲間たちを悲しませるな」
「お前はまだ若い」

かわいいなぁ。カワラヒワの声は警察みたいで。彼らの仲間にはコカワラヒワ、オオカワラヒワ、オガサワラカワラヒワなんてのもいるらしいけれど、本当に仲間なのかな。
仲間ってなんだろう。仲良し？ライバル？そばにいるだけ？

「目的はなんだ。要求を言え」

庭のカワラヒワたちは私を逮捕しようと懸命だ。

「きっとやり直せる」
「ニヤニヤして出てこい」

何を言ってるのだろう。
私は病院船の鉄格子の窓から庭を覗いてみた。
見渡す限りの凪いだ海は鉛みたいな冷たい静けさで、私はひとり幻聴に耳を澄ませた。