避雷針

　雨が地面を埋め尽くさんと降り注き、雷があちらこちらで街を照らす。
　私は自室の窓から空が光るのを眺め、窓が震えるのを感じ入っていた。
　光り、轟く。眩き、蠢く。輝き、かん鳴く。
　眩い輝きと唸る音が続く中、わずかばかりの間雨音が渡った。
　テンポが急に崩れ私は窓を注視する。
　何かに惹き混まれるように、ゆっくりと窓に近づく。
　そして避雷針が笑った。
　圧い光が視界を染め上げ、シンプルで激烈な恐怖に尻餅をつかされる。
　一瞬の雨音。
　鳴り渡る雷鳴。
　轟々と音を立て、窓を破らんばかりの勢いで私に襲い掛かる。
　私は恐怖で腰を抜かし、頭を抱え目を瞑る。
　また雷は方々で轟きはじめる。
　しばらくの間地面に突っ伏した後、ようやく私は起き上がれた。
　雷は未だ鳴り続ける。
　先ほどに比べると児戯のような雷であるが私は部屋から逃げ出した。
　背後でけたけたと滑稽な私を嗤う声が聞こえた気がした。