欲張り柴子のメシ願望

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「あ、わらび餅」
ある日の夕食、妻が箸を止めた。
「…ほんとだ。珍しいな」
外からわらび餅を売る車の音が聞こえてくる。
「ねえ、ピザとか来ないかなあ!」
「は?」
妻の発言はいつも唐突だ。
「車で来て、注文があったらその場で生地のばして焼くの。こう、くるくるっと」
妙な手つきで指を回転させるその素っ頓狂な仕草は、もしかしてピザ職人のつもりだろうか。
「焼きたてだから、デリバリーより絶対いいよ。あとねえ…」
妻は他にもいろいろ挙げ始めた。餃子・唐揚げ・握り寿司…。確かに毎日ごはん作るのも大変だもんな。判るよ。
でもさ。
今、君が使ってる箸。それ、ここにあった取り箸なんだよね。いや俺は別にいいけど、外で人と食事する時は気をつけた方が…と思いつつ、俺はその言葉をメシと一緒に飲み込んだ。
今はその時じゃない。多分。
『わ~らび~~もち~~』
どことなく哀愁漂う売り声が、遠く風にのって流れていった。
その他
公開:20/09/14 11:42
ある日の秋田家の食卓 一部フィクションで お送りしております ご了承下さいませ(笑)

秋田柴子

2019年11月、SSGの庭師となりました
現在は主にnote・TALES・公募でSS~長編を書いています
留守ばかりですみません

【活動歴】
・第2回 日本おいしい小説大賞 最終候補(小学館)
・第31回やまなし文学賞 佳作『雨を知るもの』
・創作大賞2025 入選 『栗と牡丹』
・SSアンソロジー『ベリショーズ』寄稿
・ホラーアンソロジー『ウタ・カタ』寄稿

【刊行】
・第31回やまなし文学賞受賞作品集(山梨日日新聞社)
・栗は月色、こがね色 和菓子処長月堂(朝日文庫)
 

【note】
 https://note.com/akishiba_note

【Twitter】
 https://twitter.com/CNecozo

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