蜃気楼

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 火花の飛び散る匂い。蒸し暑い夏夜。
 夏のせいにして。暑さのせいにして。
 そうして僕らは許されない思いを告げた。

 花火の音が声を消し去るなんてことはない。ちちちと鳴く線香花火の音が響き渡る中、僕らの言葉ははっきりと伝わった。
 花火が鳴く。鳴いて、鳴いて、鳴いて、そして、泣き止んだ。
 静寂が広がる。少し離れた明るい場所の喧騒なんてもう聞こえない。互いの息遣いだけがはっきりと聞こえだんだんと大きくなる。
「ありがとう」
 どちらが告げたのかはわからない。僕かもしれないし、彼女かもしれない。もしかしたら、互いに告げたのかもしれない。
 花火はもう鳴かない。
 でも、僕たちは。
 揺れる視界に映る、彼女の綺麗な瞳が歪んで見えたのはきっと夏のせいだろう。
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公開:20/09/14 07:00
恋愛 青春 花火 しんみり

佐々木笹

初めまして。特に小説を書いてきた経験はありません。
感覚のままに書いているので、物語の面白さとかは特にありません。
筆が乗るままに書いた文の独特さということで目を瞑っていただければ幸いです。

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