超速成長ヒゲ男(ひげおとこ)書道家になる（１）

通称ヒゲ男（ひげお）は、朝剃ったら夜には足元まで伸びるほどヒゲの成長が早かった。時速20cmで伸びるのだ。寝ている間にも身長ほどに伸びる。
朝剃っても会社に着く頃には20cm伸びているのでバリカンで刈る始末だ。出張先でも打合せが終る頃には40cm伸びている。
ヒゲ男は会社を辞めさせられた。

そんなヒゲ男に目を付けたのが高名な書道家である。ヒゲ男を招いてヒゲを検分した。高額な筆に使える上質のヒゲだった。
「私に弟子入りしなさい。君なら自らの流派を構えられる」
ヒゲ男は一も二もなく「はい！」と返事をした。

長いヒゲの毛先を縛って師匠の筆の役をやる。巨大な字を書くのだ。これがヒゲ男の才能を開花させた。師匠の目線で師匠の筆捌きを毎日見るのだ。成長しない訳がない。
ヒゲ男は自分のヒゲを筆とする手法を編み出し精進を重ねた。

「よし、君の個展を開こう。実演がメインだ」と師匠先生は大乗り気で言った。