針の塔

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自然エネルギー機構は、天に届くのではないかと思われるほど高く聳え立つ針の塔を建設していた。周辺は立ち入り禁止となっており、他に高い建物はない。
針の塔は、雷雲から出される電波を受信しており、雷雲を塔の真上に引き寄せることが狙いだ。針の塔を建設する際、雷雲が多発する場所を選んだ。
雷雲との距離が短いほど雷が落ちやすく、電気は尖っているところに流れやすい性質があり、針の塔は、巨大な避雷針ともいえる超高層ツリー型発電所だ。
針の塔に落ちた雷は、塔へ伝わらず地面に電気が流れる。地面の直下には、電気を回収して貯めるための蓄電池が設置されており、地下に埋設された送電線を通じて運ばれる。
いよいよ針の塔がバベルの塔と同格になる。人智を超えた代物には神の天罰が下ると言い伝えられているように、ある日、大地に轟く雷が針の塔めがけて落ちて来た。針の塔は、真っ二つに引き裂かれ、天に届くほど火柱を立てて崩れ去った。
SF
公開:20/09/13 07:08
自然エネルギー 雷雲 電波 避雷針 電気 蓄電池 送電線 バベルの塔

SHUZO( 東京 )

1975年奈良県生駒市生まれ。奈良市で育つ。同志社大学経済学部卒業、慶応義塾大学大学院政策・メディア研究科修了。
田丸雅智先生の作品に衝撃を受け、通勤中や休日などで創作活動に励む。
『ショートショートガーデン』で初めて自作「ネコカー」(2019年6月13日)を発表。
読んでくださった方の琴線に触れるような作品を紡ぎだすことが目標。
2022年3月26日に東京・駒場の日本近代文学館で行われた『ショートショート朗読ライブ』にて自作「寝溜め袋」「仕掛け絵本」「大輪の虹列車」が採用される。

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