朽ちる花

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 祖母の唇に花束を押し当てた。
 唇にあたる感触と、口に含んだ花の少し酸っぱい味に祖母は頬を緩める。
 少しずつ祖母から何かが抜け出していき、そして安らかな顔のまま死んでしまった。
 昔から花が好きな人だった。私もよく花畑に連れて行ってもらったし、祖母自身が花のように凛として美しい人だった。そんな祖母だから最後に騙すような形でも花畑に連れて行ってあげることができたのはよかったのだと思う。
 祖母の周りに並べられた、色とりどりの花たちを眺める。方々から集めた花たちはお世辞にも綺麗でないものも含まれているが、そのどれもが美しい。
 私は祖母に押し当てていた花束のための花瓶を探そうと周囲を見渡す。流石に花好きなだけあってそこらにあいた花瓶があり私は適当なものに水を入れ花を生けた。
 祖母は死んだ。そしてこの花もいずれ朽ちる。
 されど最後まで凛と生き続けるのだろう。
 私もそうありたい。
その他
公開:20/09/13 07:00
祖母 感動 しんみり

佐々木笹

初めまして。特に小説を書いてきた経験はありません。
感覚のままに書いているので、物語の面白さとかは特にありません。
筆が乗るままに書いた文の独特さということで目を瞑っていただければ幸いです。

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