幸福給付者(ヒーロー)

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私は様々な幸せに追い抜かれる。
今日は「笑い声と数人の青年を乗せた自転車」に追い抜かれた。
私は生きることに飽きていた。
私が生まれ16の年月しかすぎてはいないが、「意味のない生」に愛想をつかすには
十分な時間なのではないだろうか。

今日は「笑みを浮かべながらサッカーボールを抱え走る少年」に追い抜かれた。
私は幾多の人に幸せを与えるヒーローになってみたかった。
しかし、そんな夢が叶わないのは周知の事実だ。

今日は「下を向き亀よりも遅く歩む少年」と並んだ。
私は、そんな彼に目を向けた目を上げ前に戻し、信号のない十字路に目をやった。
車の音がしたので、私が歩みを止めると、
彼は私を追い抜いた。

今日は「下を向きながら一人終わりに向かう少年」を追い抜いた。
彼を飛ばした後、私は終わりを迎える。
その刹那、何も語らなかった彼の口から、
「死にたかったのに」

私はヒーローになれたのだろうか。
その他
公開:20/09/12 21:35
更新:20/09/13 18:06

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