夏の匂いとカミナリ屋さん

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「……カミナリの研究?」
 ここは高台の上の公園だ。そしてその見慣れぬおじさんは自分はカミナリの研究をしていると、そう言った。カバンから金属の棒が突き出た水筒のようなものを取り出し続ける。
「ほらこれは避雷針の小さいヤツさ。この棒にカミナリがおちると、下の部分にカミナリが集められるってわけだ」
「すごいや!でも……おじさんはなんでそんなことしてるの?」
 するとおじさんは寂しそうな顔をしてこういった。
「おじさんはね、カミナリに恨みがあるんだよ。だからいつかやり返してやろうと思って、カミナリを日々研究してるってわけさ」
「へぇ……」
 良くはわからなかったけれど、さみしそうなおじさんの表情を見ていたら、僕はそれ以上聞くことができなかった。
 その時、高台を風が通りすぎる。おじさんの帽子が飛び、白いTシャツがはためいた。そして、僕は見てしまった。そのおじさんには、――『おへそ』がなかった。
ファンタジー
公開:20/09/12 11:30
更新:20/09/12 11:30

たけのこ

たけのこです。
諸事情によりきのこたけのこ論争には加担できません。

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