年末のゴミ収集車

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転勤でこの村に引っ越してきて初めての年末。年内最後の出勤のため家を出た。すると前からゴミ収集車がきた。その後ろを近所の奥さんがゴミを抱えて追いかけている。年内のゴミ収集も最後だから必死だ。
表通りに出るとまたゴミの収集車が通り過ぎた。その後ろからおばあさんがゴミを持って追いかけている。反対車線にもゴミ収集車を追いかける中学生。
周りを見渡すとどこもかしこもゴミ収集車を追いかける人だらけである。
唖然とする私に村の青年団が声をかけてきた。
「なに突っ立てるんですか。あなたもはい、これ」
そういってゴミ袋を渡された。事態がのみ込めずぼうっとしていたら
「早く、あの収集車を追いかけて!」
そう怒鳴られ私は必死で追いかけた。どこまでもどこまでも。
あとで知ったがこれは村独自の伝統行事らしい。持っているゴミを収集車に見事入れられると来年は安泰なのだそうだ。
私は一刻も早くこの村を出ようと思った。
その他
公開:20/09/12 08:31
更新:20/09/14 08:00
ゴミ収集車 伝統行事 年末

ac

エッセイ、ショートショート作家志向。2020年4月からnoteで作品を発信。毎日投稿で執筆筋肉を鍛え中。羞恥エッセイ、妄想話、エレガント下ネタ、不可思議実話など作風はビュッフェスタイル。
note→https://note.com/acacac
twitter→https://twitter.com/aikingcojing

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