金太郎飴のリアリティ

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近所に住む和菓子屋のご隠居が、引退後趣味で作り始めた菓子は金太郎飴であった。
「趣味だから思う存分金太郎飴のリアリティを追求したい!金太郎の生命力を出したい!」
祖母の使いでいつもの菓子を買いにきた僕に、ご隠居は熱く語った。完成したあかつきには、ぜひ味見してくれとも。

そして完成したリアリティ溢れる金太郎飴が、僕の目の前にある。
最初に端っこを切る。
ツヤツヤほっぺのあどけない顔の金太郎。まさに食べちゃいたい可愛さ。
そこから2センチほどを切る。
少し利かん気の金太郎少年。
さらに2センチ。
悩める金太郎青年。
切るたびに金太郎は成長していく。
中年金太郎、白髪の出始めた初老金太郎、病死した金太郎。
朽ちていく金太郎。(超絶技巧すぎて詳細は自粛)
とうとう白骨化した金太郎。
「だれがこんな物食うんだい」
祖母が容赦なく言った。
ご隠居があんまりしょげてたので、僕が赤ん坊金太郎だけ食べた。
その他
公開:20/09/11 21:12

工房ナカムラ( ちほう )

ボケ防止にショートショートを作ります

第二回 「尾道てのひら怪談」で大賞と佳作いただきました。嬉!驚!という感じです。
よければサイトに公開されたので読んでやってください。

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