福笑い

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わたしの顔は変幻自在だ。正確には、自分では変えられないのだけれど。
亜美ちゃんたちが毎年わたしを変えてくれる。
「じゃあ亜美ちゃん目隠ししてね」
「よし、これはここ?」
「違うよ!もっと上!」
「もっと右右!」
亜美ちゃんたちが笑い転げている。わたしの口が顎の輪郭をはみ出ると笑いが起こる。わたしの目が鼻と重なると笑いで空間が揺れる。わたしの眉が縦になると亜美ちゃんが目隠しを外して笑い転げる。
「亜美これ大好き」
「また来年のお正月やろうね」
わたしはそうして押入れにいる。亜美ちゃんはきちんとしているいい子だから、片付けも得意だ。
顔のパーツはクッキーの匂いがするカンカンにまとめられている。そして顔の本体はクリアファイルに入れられて一緒に押入れにいる。最近亜美ちゃんを見かけない。お正月が待ち遠しい。
「お母さん、見て。まだあったんだ…もういらないね」
わたしは福笑い。今はのっぺらぼうだ。
その他
公開:20/09/12 18:46
#初心者#初投稿

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