【神の図鑑】遊愛のルダス

馬乗りになったレイの赤く血に染まる拳が、男の顔面に何度も振り下ろされる。それでも男の笑みは消えない。
「そんな」「ものは」「認めないッ」黒い澱の様な殺意がレイの心の奥に沈殿していく。
「よせ、しもべ！死んでしまうぞ！」
図鑑の声も届かない。

--時は少し遡る。

失踪事件については知っていた。クピドに連れられて来た学生・トモの恋人が失踪したと聞かされた時、レイは驚いた。
「探偵じゃないけど、クピドの友達なら…」
調べると「ルダス」という会員制クラブにたどり着く。耳障りな音楽が鳴り響きミラーボールが品のない光を拡散して女性たちが踊る、皆、目に生気がない。
「素晴らしいだろ、俺の愛に酔う女たちは」
玉座を模したようなお立ち台の上のソファに鎮座する男が小袋の白い粉を見せながら、口元を歪める。薬物だ。
「愛を…もっと愛をください…。」
縋るような変わり果てたトモの恋人。
レイの中で何かが弾けた。