青を澄ませば

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彼は小説家になることを夢見ていた。

夢見ていた、と言っても、これまで真剣に作品作りに取り組んできたわけではない。
仕事を続けながらなんとなく日々を過ごし、気づくとオジサンになっていたのだ。
書けたらいいな、と思ってはいたけれど、書くための具体的な努力には、ついぞ関わらずに歳を重ねてきた。

まだ間に合う、と言い張ることはできる。選択は自由だ。
だが世間を見渡せば、十代でデビューを果たしているものもたくさんいるし、売れるのが遅くとも、それまでに長く研鑽を積み、いざ処女作を認められる頃には既に十分な実力を蓄えているものもある。無料で読める小説投稿サイトには、まだ日の当たっていないだけで才能に満ちた作家の卵が溢れている。優劣の差は埋めがたい。

彼は怯えている。
それでも、と私は考える。

他人にはガラクタに見えても、決して捨てることができないもの。
彼の人生は、その中にしかありえないだろう。
青春
公開:20/09/14 07:00

レオニード貴海( 某海なし県 )

さまようアラフォー主夫

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