屏風の虎

屏風の虎を知っているか？
そうそう、一休さんだよ。
描かれた虎が夜な夜な屏風から出てきて暴れるってんで捕まえて欲しいと無理難題を吹っかけてきた殿に「では捕まえるので追い出してみて下さい」と吹っかけた話さ。
俺は常々思ってたんだ。
一休ってのは随分想像力のない奴だってな。
だってそうだろ？
あの返答はハナっから虎の話がデタラメじゃあなきゃ頓知と言えないのさ。
もし虎が屏風から本当に出てきたらどうなっていたと思う？
すぐにお陀仏だ。
だいたいお前ら人間ってのは、どうにも平面ってものを侮りすぎなんだ。
俺とお前を隔てているのはたった一枚の薄い境界に過ぎない。
その気になったらいつだってここから顔を突き出して牙を突き立てられる。
おい、聞いてんのか？
お前だよ。
小さい画面からこっちを覗いてきやがって。
腹立つ奴だな。
決めた。
サッサと画面を暗くするんだな。
瞬間、その喉笛に食らいついてやる。