鬼のいぬ間

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実家に帰ると父の畑の真ん中に犬小屋があった。
「あれは”鬼のいぬ間”っちゅー防犯グッズだ」
鬼のいぬ間?
「最近は農作物泥棒が多いだろ?あれを置いておけばその対策になるんだ」
鬼瓦的な意味で?
「いいや、農作物泥棒が来たら小屋から恐ろしい鬼の犬が出てくる」
鬼の犬?ケルベロスの事?
「違う違う。あれは門番だろう。こっちは番犬だ」
へ~…で、どんな犬なの?
「儂もまだ見た事はない」
見た事ないの?
「ああ、鬼の犬が小屋から出てくるのは盗人を捕まえる時だ。幸い、ウチはまだ入られてねぇ」
それじゃ、騙されているかもしれないじゃん!
「まさか…儂はこいつの為に鬼犬物取扱者の資格も取ったんだぞ?」
ああ…騙されている…
溜息を吐き、畑に足を踏み入れた私の襟首を父は思いっきり引っ張った。
「何やっとる!?鬼の犬は奇襲犬の一種ぞ!」
私は一瞬だけ小屋から出た鬼の犬を見た。
本気で農作物泥棒の身を案じた。
公開:20/09/10 19:20

幸運な野良猫

元・パンスト和尚。2019年7月9日。試しに名前変更。
元・魔法動物フィジカルパンダ。2020年3月21日。話の流れで名前変更。
元・どんぐり三等兵。2021年2月22日。猫の日にちなんで名前変更。

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